1. 植栽前の計画
環境に合わせた品種の選定
竹は、品種によりそれぞれ特徴が異なります。それらを見極めて植栽される環境、立地に合わせた品種の選定が必要です。
下表にその特徴をまとめました。

・大型になる品種にも小さな苗があり、その竹は生長しませんが、更新によりその最大高さまでの物が出てくる可能性があります。
→植栽数年後にどのくらいの高さの竹林になって欲しいか(なっては困るか)を考慮します。
・植栽地の面積・土厚の要求度は大型になるほど必要となります。
→幅・奥行きのない植栽地、土厚の取れない屋上緑化、小さなプランターなど狭い場所でも生息のできる品種を検討します。
・植栽に向かない環境への耐性が品種によって異なります。
→ビルの谷間など日当たりの悪い場所や、屋上など日当たり・風当たりが強く乾燥する場所に良く耐える品種を検討します。
→室内などでも光量が足りればすぐに枯れはしません。
しかし、気温の変化がないところでは発筍が無くなり更新がはかれないため、数年で枯れてしまいます。
よって、定期的な植え替えが必要となります。(通常の竹で4,000lux 耐日陰性のある品種で2,500luxあれば数年の維持は可能です。)
植え付け本数と適期
・植栽地の奥行きがある場所には、大型種で1㎡当たり1本、小型種で2本程度、奥行きが無く列植する場合は、1m当たり2本程度で千鳥に植えます。あまり少ないと風当たり、日当たりによる傷みが出やすく発筍に時間を要します。逆にあまり多いと中が蒸れ下枝が上がり、病虫害の発生原因となります。
・植栽適期は常緑樹の扱いに準じ、水揚げがあり活発な生育が見られる3月下旬から10月下旬までとなります。ただし、夏の残暑期は根の生育は活発ですが暑さで植え傷みが出やすく、発筍期は栄養が奪われ共倒れになる事があります。冬期は何をしても枯れやすく可能ならば避けた方が無難です。
2. 植栽時の注意事項
土壌条件と肥料
・竹の分布は広く、黒ぼくなど火山灰土から粘土質の赤土などの体積土、磯混じりの砂壌土のような所までどんな土質でも生育は良いです。しかしながら、都心部など狭く環境の優れない場所では、水持ちが良く排水性に優れた壌土を選ぶべきです。phは酸性を好みます。
・昨今では構造上の問題から軽量な人工土壌を使用する事が多いですが、締まりが悪く根が張れない点と、有機物の還元が少なく養分の保持が悪いため灌水で流亡してしまいます。よって、定期的に即効性の液肥を施すなどの対策が必要です。
・植栽後早い段階で発筍を期待したいため堆肥や肥料などを混入することが望ましいです。特にイネ科である竹にはケイ酸が必要で、これを多く含む真珠岩系パーライトは有効です。
・竹の落葉は、葉が薄く軽いため飛散し面倒ですが、ケイ酸分を多く含むので竹にとってこれほど効果的な肥料はないといえます。地被植物などで飛散を防止し、自然循環により土へ還元させるのが理想です。また、これは水分蒸散の抑制にも効果があります。
根止めの必要性
・竹は、地下部で地下茎という根を張り巡らせ、筍を生み広がって行きます。都心部のコンクリートで囲われた植栽地では問題ないですが、地つながりの植栽地では、コントロールが必要です。波板や通常のゴムシートでは劣化が見られ、破れてしまう事があるため、長期にわたり強度のある素材が必要です。コンクリートの擁壁は理想ですが工期・経費がかさみます。
・弊社では耐候性に優れ、ダムなどの防水に長年使用実績があり、突き抜け、裂削に強いポリプロピレン系硬質ゴムシートを勧めています。竹の品種により異なりますが40〜100cmほどの深さまで敷設する必要があります。
(参考商品 三菱樹脂(株)メタプレーンシートt1.5mm、デュポン社RCR®防竹シートt0.69mm)

硬質ゴムシートで根止め
水極めと支柱
・竹は水分要求量が多く、また、土中に空隙があると乾燥の原因となるため、しっかりと水極めして根本を固め、雨水が溜まるよう水鉢を作る事が肝心です。植栽後数ヶ月は灌水を必要とします。
・土中で地下茎でつながり養分の行き来をして生息していますが、単体に切り取られると支持根が少なく上部は重く、バランスが悪いです。そのため植栽当初は、風により揺すられないよう支柱を掛ける必要があります。通常は竹布掛け支柱を用います。また、風当たりの強い場所では、井桁状に組んで竹同士で持たせると良いです。

井桁に組んだ支柱
3. 植栽後の管理
植栽初期
竹林から掘り出され違う環境に植えられた竹は、元の日当たり具合と変わり、一夏を過ぎる頃には稈の色が褪せ初め植え傷みが目立ってきます。しかし、地下部では旺盛に地下系を伸ばし、新しい竹を生やす準備をしています。よく、「見た目が悪くなったので植え替えたい」という相談を受けますが、これは、せっかく伸び広がった地下茎を切ってしまい、手戻りする事になるので我慢していただき、定期的な灌水と施肥により、1年でも早くその場から竹を生やすべきです。大型の品種では2〜3年、小型のものであれば一夏を越した翌春には出始めます。最初は小さな物しか見られませんが、年々大きな物が出始め、5年を目途にその場から発生した竹に入れ替えられれば大成功と言えます。また、その本数が増えてくると竹どうしで木陰を作り、自身を守り合って日焼けによる傷みは少なくなってきます。
間伐更新の重要性
その後、だんだん本数を増やし混み合ってきます。そのままにすると藪の呈を成します。これは景観上も病虫害発生原因としても芳しくありません。竹は10年もすると枯れてしまい、美観を保つのはせいぜい5年程度であり、よって古くなった物から間伐をしていくことが重要になります。その本数は当初設計の意図にもよりますが、風通し良くできるだけ均等に生えているのが理想です。要は見た目にきれいな状態にすることです。植木のような剪定作業は必要なく、古くなった物を地際から切って行だけで良く、発筍が充分に見られれば筍の内に間引くことも発生材の処理が少なく作業的に楽です。また、それらは我々の舌を楽しませてくれたりもします。
病中害防除
竹につく病虫害はさほど多くありません。日当たりが良く、風の抜けが良い活力ある健全な竹林であれば病虫害の大発生など滅多におこらない物ですが、都心部の狭く環境の優れない場所ではたまに見かけます。病虫害対策に大切なのは、まずは間伐更新と施肥により活力ある竹林形成を志す事であり、発生させないことに注力するべきです。万が一発生した場合は、発生初期に対応することが肝心となります。ただし、予防をかねて定期的に行うことはかえって悪く、他の天敵生物まで減らしてしまう可能性があり、自然のバランスを崩し大発生の原因となりかねないためお勧めしません。下に主だった物とその対策を記しています。
タケホソクロバ・セスジノメイガ(ハマキムシ)・タケアツバ → 有機リン系(DEP・MEP・マラソン・オルトラン等)
ワタカイガラムシ・アブラムシ類 → カルホス乳剤(越冬期間中については、マシン油乳剤・石灰硫黄合剤)
ハダニ類 → オサダン水和剤
さび病・すす病 → 有機硫黄剤(ダイセン・マンネブダイセン)